

プロジェクト概要
クライアント: 大手メーカー企業
目的: 展示会での製品紹介の効率化と来場者体験の向上
課題: 展示会場の不安定なネットワーク環境下でも確実に動作する製品紹介ツールの開発
解決策: オフライン対応のPWA(Progressive Web App)を活用した案内コンテンツの制作
背景と課題
お客様は年に数回、全国各地の展示会に出展しています。従来はパンフレットや印刷物を中心とした製品紹介を行っていましたが、より効果的な情報伝達と来場者とのインタラクションを高めるためタブレットを導入してデジタル化を推進しました。しかし、展示会場では以下の課題が存在していました:
- 不安定なWi-Fi環境: 多くの出展者が同時に接続するため、ネットワークが頻繁に切断
- 高解像度動画コンテンツの必要性: 製品の特長を効果的に伝えるためには高品質な動画が不可欠
- 複数デバイスでの一貫した体験: 展示ブース内の複数タブレットで同一のコンテンツを提供する必要性
- 展示スタッフの運用負荷軽減: 技術に詳しくないスタッフでも簡単に操作できるUI
特に重要だったのは「オフライン環境でも高解像度動画が確実に再生できる」という要件でした。過去の展示会では、ネットワーク切断により映像が途切れるトラブルが多発し、プレゼンテーションの質が低下。この問題を解決するべく、PWAの採用をご提案いたしました。
技術的アプローチ
PWA(Progressive Web App)の採用理由
- オフライン対応: 展示会場のネットワーク状況に左右されず、全てのコンテンツを事前にタブレットにキャッシュ
- インストール不要: アプリストア登録やダウンロードが不要で、ブラウザからすぐに利用可能
- コスト効率: ネイティブアプリ開発と比較して開発期間が短縮でき、コスト削減が可能
- マルチOS対応: iOS、AndroidなどのOSを問わずどのタブレットでも同一の見た目と操作性を実現
実装のポイント
1. オフライン対応の確実な実現
全ての動画コンテンツや画像、テキストデータを事前にタブレット内に保存する仕組み(Service Worker)を採用。これにより、展示会場でWi-Fi接続が途切れても、スムーズなプレゼンテーションが可能になりました。
2. 動画コンテンツの最適化
高品質を保ちながらも、タブレットの処理能力とストレージを考慮した動画最適化を実施:
- 長時間の連続利用でもバッテリー消費を抑える設計と動画コーデック選定
- 動画は事前にタブレットにダウンロードし、即時再生できる状態に準備
- 容量制限を考慮しつつ、製品の魅力が伝わる高画質を維持
3. 直感的なユーザーインターフェース設計
来場者や展示会スタッフが直感的に操作できるよう、シンプルかつ大きなタッチターゲットを意識したUIを設計:
- カテゴリ別の大きなサムネイル表示で分かりやすい構成
- タッチやスワイプなどのジェスチャー操作に対応
- 明確な階層構造と「ホーム」ボタンの常時表示
導入効果
PWAの導入により、以下の効果が得られました:
- 安定した製品紹介: 前回の展示会と比較して、プレゼンテーション中の技術的トラブルが98%減少し、商談の質が向上
- 来場者対応の効率化: 動画と製品情報をスムーズに提示できることで、名刺交換数が前年比22%増加
- 来場者満足度の向上: インタラクティブなコンテンツにより、展示ブースの平均滞在時間が約2.5分延長
- 運用負荷の軽減: 直感的な操作性と安定した動作により、展示スタッフの満足度が大幅に向上
- コスト効率: 印刷物の削減とアプリ開発コストの削減により、総合的な出展コストを15%削減
展示会でのPWA活用のポイント
本事例から得られた、展示会でPWAを活用する際のポイントは以下の通りです:
- 事前準備の徹底:
- 展示会前に全てのコンテンツを完全にタブレットへ保存する時間を確保
- 会場入りする前にオフライン環境下で全ての端末で動作確認を行う
- バックアッププランの用意:
- 万が一の不具合に備えた代替手段を用意
- 重要な製品情報は印刷物でも紹介可能にしておく
- コンテンツ更新への対応:
- 展示会中に価格や仕様変更があった場合の更新方法を確立
- 現場スタッフでも簡単に対応できる更新の仕組み
- 誤動作対策:
- 来場者や展示会スタッフが誤って電源ボタンやホームボタンを押してアプリを終了してしまわないよう、キオスクモード(iOSはアクセスガイド)を設定
- フリーズ等でタブレットが動作しなくなったケースの対応マニュアルの周知
- ハードウェア管理:
- 長時間の動画再生によるバッテリー消費対策(充電環境の確保)
- タブレットの固定方法や盗難防止対策
まとめ
展示会という特殊な環境において、PWAは「オフラインでも確実に動作する」という要件を満たすための理想的な選択肢となりました。特に動画コンテンツを多用するシーンでは、事前キャッシュ戦略が効果的です。
お客様からは「会場のネットワーク状況に左右されず、安定した製品紹介ができるようになった」「来場者の反応が格段に良くなった」といった声をいただいています。今後は展示会だけでなく、お客様の営業担当者向けのセールスツールとしても活用範囲を広げていく予定です。
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